英語の「受け身」は文法の形と訳がわかれば十分?

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一般的な「助動詞」の理解

受動態というと一般的に

形:be動詞 + 過去分詞
訳:〜られる・〜される
使い方:
1. 被害の表現
(「〜が・・・によって壊された」など)
2. 客観的・一般的な表現
(「〜寺は・・・年につくられた」など)

というのがよく知られるところです。

特に「〜られる・〜される」という言葉の印象から
「1. 被害の表現」のイメージが浮かびやすいかもしれませんが、
個人的には皆様に
「2. 客観的・一般的な表現」を
強調しています。それは

a. 実際のビジネス・アカデミック分野では「被害」よりも
「客観的・一般的」に何かを述べることが
多い
b. 使い方に注意が必要

だからです。
ということで、今回はこの「客観的・一般的な
表現」についてお話を進めてまいります。

まず始めに「客観的・一般的とはどういうことか」についてもう一度考えてみましょう。

「客観的・一般的」とは、
「誰が・何がどうした」のような
「動作主」を強調したいのではなく
「誰かの・何かの動作によってできた
状態・結果・事実」を強調したい場合

によく使われます。例えば

この寺は約600年前に建てられました

で強調したいのは
寺を実際に建てた宮大工さんという動作主
ではなく
約600年前にこの寺が建てられたという事実
です

宮大工により建てられた寺

このように「客観的・一般的」というのは
「状態・結果・事実」を伝えたいときに
使われますが、実は

「2. 客観的・一般的な表現」の受動態は
「英語」よりも「日本語」の方が
使われることが多い

というのが大きな特徴です。

「受動態」が多い日本語

では、日本語にはなぜ受動態が多いのかというと、例えば、

A: 昨日、何してた?
B: ん〜、買い物行ったかな・・・

という、日本語は「主語」を省くことが非常に
多い言語です。
試しにあえて主語を入れてみると、

A: 昨日、あなた何してた?
B: ん〜、私は買い物行ったかな・・・

のように、「あなた」という主語が入ると少し
追求」するような印象になったり、
「私」という主語が入ると「他の人は行かなかったけど私は行った」のような「特別感」が出てしまいます。

このように、日本語では「主語を入れなくても
伝わるとき」にあえて主語を入れると

強調する印象

が出てしまうのです。
だから「主語が明らかなとき」は省くことにより

ソフトな印象

で物事を伝えることができるのです。

そして、これこそが先程の
2. 客観的・一般的な表現の受動態」とマッチします。
ここで、もう一つ例をご覧ください。

先週、新製品が発売されました

この文を「能動態」で「主語」を入れて表現するとどうでしょう。

先週、我が社は新製品を発売しました

もちろん、あえて「自社が発売したんだ!」と強調すべき状況なのであれば問題ありませんが、
特にそういう状況でもなければ「主語」を入れて
しまうと「強すぎる印象」になり
違和感を感じます。
だから日本語では、

動作主を全面に出さず「ソフトな印象」で
物事が伝えられる受動態

がよく使われるのです。

使い方に注意が必要な「英語の受動態」

しかしここで問題が生じます。それは、

日本人が話す・書く英語には「受動態」が
多くなる

ということなのです。
英語、特に「米語」では「日本語」に比べそこまで受動態は使いません。

しかし、それはなぜでしょうか。実は、

日本語・英語それぞれの言葉にある
文化や歴史

が関わってきます。

もちろん、日本・西洋共に地域によって
さまざまですが、この文化・歴史が言語にも影響を与え

調和
の文化・歴史にある日本では

自分・主語は抑えて
「客観的・一般的」に物事を表現する
⬇︎
動態
が多くなる

主張
の文化・歴史にある西洋では

自分・主語を明確に伝えて
「それぞれの立場」を表現する
⬇︎
動態
が多くなる

としたら日本語では受動態が多く、
英語では能動態が多くなるのも理解できます。
しかし問題は

日本人が
日本語をそのまま英訳すると
不自然な英語になる

ことがあり、その一つが「受動態」というわけ
なのです。
とすると、ここで大切になるのは

英語ではいつ受動態を使うのか
をしっかり理解する

ということなのです。

「いつ受動態・能動態を使えばいいか」を
判断する方法

受動態には

1. 被害の表現
(「〜が・・・によって壊された」など)
2. 客観的・一般的な表現
(「〜寺は・・・年につくられた」など)

がありますが、2つとも根底にあるのは

「誰が・何がどうした」のような
「動作主」の強調ではなく
「誰かの・何かの動作によってできた
状態・結果・事実」の強調

です。

日本語では受動態の表現するときも英語では
能動態・受動態2つの表現になることがあります。例えば、

その書類は彼によって作成されました

という文があると、日本人は「勉強の英語」
により「文を訳す」ということが基本
になっているので、
ほとんどの場合、

The document was prepared by him

のように「受動態の文」で訳すのではないかと
思います。
もちろんこれは何ら間違いではなく
正しい英文です。

しかし、「文字訳」が基本になると

He prepared the document

と「能動態の文」が出にくくなってしまいます。

この2つの英文は「どちらの方がいい・悪い
ということでは全くありません。
また、「日本語が受動態の文」だから「英語も
受動態の文」ということではありません。
大切なのは、

ということなのです。ですから、

ということになります。
その上で、日本人が英文を考える場合は特に

ということを常に念頭に置いておくといいかと
思います。


しかしそうすると今度は
逆に『受動態』を使う時がよくわからなく
なってくる!
という混乱も
起きるかもしれません。
そこで、「受動態」を選ぶポイント

迷った場合はまずこれらの時は「受動態」にして
問題ないかと思います。

以上が「『いつ受動態・能動態を使えばいいか』を判断する方法」でした。
当たり前のことですが、英語は「言葉」なので、
数学の方程式のように

訳・意味が「〜られる」になれば必ず受動態

というようになるわけではありません。

日本語では「受動態」で表現することも、
英語ではむしろ「能動態」
ということが非常に多くなりますし
メッセージ・ニュアンスにより
「能動態・受動態」を使い分ける判断
も必要になります。

今回は「受動態」についてお話をさせていただき
ましたが、「受動態」に限らず
他の文法・構文」でも常に
メッセージ・ニュアンス・背景」を踏まえた上で「英語の表現」が選べるようになれば、
英会話でも試験でも自然にネイティブのような
感覚で英語のアウトプット・インプット
できるようになっていきます。

まとめ

● ビジネス・アカデミック分野では
「受動態」は「客観的・一般的」な表現
として使われることが多い
● 日本語の感覚で文字訳をすると
「受動態が多い不自然な英語」になる
可能性がある
● いつでも「メッセージ・ニュアンス・
背景」を踏まえた上で「英語の表現」を
判断していく

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